画像は『その着せ替え人形は恋をする』第15巻/福田晋一/(株)スクエア・エニックスより
着せ恋・・、『その着せ替え人形は恋をする』が、完結しました。
私はコミックでしかこの作品を読んでいないので、完結を知ったのは、コミック発売直前(コミックのニュースなどもあまり見ないもので・・)。
14巻がもう、そう言う感じだったので、ビックリもしてませんし、15巻の表紙が発表され、それがまりんちゃんの白無垢姿だった時点で『あ〜、そうか』と言う感じ。
ハニエルのエピソードであんなに風呂敷広げちゃって、14巻ではその回収もなく、五条君からの告白を受けたまりんちゃんが興奮しているシーンで数ページ使っちゃった辺りから、作者さんが飽きちゃったのかな??と言う印象拭いきれずでした。
と言うところで、完結巻である、第15巻のあらすじと、コミックの内容を、感想交えて。
ちょっぴり酷評。
でも、1巻から完結の15巻まで、まりんちゃんの可愛さとか、明るさに救われ続け、眩しい作品でもありました。
思慮深い五条君に対して、感情を素直に表す、ボキャブラリーの少ないまりんちゃん。
ふたりのバランスがよく、とても読みやすい作品に仕上がっていたと思います。
しかし・・、まりんちゃんは、個人的にコミック界屈指のボキャ貧ヒロインだと思ってるのですが、これが逆に、たまに出す、人の心に刺す一言を際立たせていると思うんですよね。
この引き算、すごいですよね。


着せ恋15巻あらすじ
さて、2個前の巻である、13巻で、防災公園をハニエルのコスプレで一人勝ちしたまりんちゃん。
その様子を見て、嫉妬に駆られる五条君ですが、素直に「やきもちを焼いてしまった。自分だけのまりんでいて欲しい(流石にここまでは無理かw)」と伝えればいいものを、帰りの電車ではむっつりと不機嫌寡黙な様子で、二人の関係がギクシャクしますが、14巻で一気に形成逆転(?)。
五条新菜は、その気持ちをまりんに伝えます。
・・・、で、今までのむっつり五条君の様子を見て『自分は迷惑をかけていたんじゃないか』などと悩んでいたまりんちゃんは大喜び。
ここで、まりんちゃん感激の様子に、数ページが費やされました。
・・・、う〜ん・・、作者の意図とは・・。
そんな感じで15巻。
完結巻の始まり。
メインストーリーの他、番外編1の、エピローグ1、スピンオフ1、あとは、作者のあとがきで構成されています。
話はアキラと五条君の、コミケ後日談から。
司馬刻央のSNSからお褒めの言葉が発せられ、素直に嬉しいと言う言葉が出せるようになった五条君。
クラスの仲良したちにも、まりんちゃんと付き合う事になったと報告します・・。
と言っても、周りのみんなはてっきり付き合ってると思ってたと言う反応。
これまで大分意固地で引っ込み思案で自分の気持ちを表現できなかった五条君ですが、まりんちゃんやその仲間と打ち解けたり、自分の夢や家業を馬鹿にされたりせず、認められたことで段々と心の整理がつき、成長できたようです。
子供と大人では脳の成長や経験値が違うから、いつまでも子供じみたような、揶揄うような反応されるわけはないのですが、五条君はひとり、子供の頃の嫌な経験から抜け出せずに、ある意味自意識過剰でもありましたが、ほんと、子供の頃の嫌な記憶って、それが危険回避の経験にもなるけれど、厄介ですよね。
その後の15巻は、後日談。
付き合い始めた五条君とまりんちゃんのラブラブコメディーやら、高校卒業後のエピソードなどが入って、結婚して完結・・となります。
五条君とまりんちゃんは、進学をせず、まりんちゃんは本格的にモデル稼業に、五条君は人形師への道へ進みます。
まりんちゃんはかなりの人気モデルとなったみたいだし、五条君も、個性ある雛人形を作る者として、テレビ取材も来たようです。
順調ですね。
結婚は、高校卒業してすぐに、まりんちゃんのお父さんに挨拶をしに行ったようです。
ま、誰も反対しないですよね。
最後まで仲睦まじく、相変わらず、五条君大好きなまりんちゃんが見られ、物語は大団円という感じで幕が引かれます。
私は冒頭に「まりんちゃんの明るさに救われた」とか書いたのですが、この漫画は、最後まで暗雲立ち込めることが少なく、楽しく読めたし、お互いを認め合うような、負の部分が少ない読みやすい作品でしたが、あとがきを読むと、そのようにこの漫画は描かれたようでした。
『メダリスト』や『スキップとローファー』なんかにも感じていましたが、生きづらい世の中で、最近はこういう作風が流行るのかな・・、なんて思ったりもしています。
さて、広げた風呂敷と、スピンオフの1作品について
こんな感じで、13巻であんなにムーブメントを巻き起こしたハニエルについては、半ば強引というか、ご都合主義に『なかったこと』として漫画が終わっちゃうんですが、私が13巻で一番悩んだ、溝上氏の「この若さでこんな顔ができちゃうなんて、可哀想に(意訳)」というセリフの回収は全くされていません。
可哀想って、なんだよ!
事実この後、可哀想な出来事なく漫画終わってんじゃん。
一体なんだったんだ。
しかも、13巻でただ一人、まりんちゃんの正体に迫った妹尾(溝上氏の編集)が、有名になったまりんちゃんの写真を見て、ハニエルコスの彼女だと、気がつかない事なんて、あるだろうか・・。
金に敏感な大人たちが、『探しあてれば一攫千金!』とばかりに、鵜の目鷹の目でハニエルコスの人物を探しているのに、それで終わるなんて都合のいいこと、物語上許されるのか??
司馬刻央に関しては、ハニエルコスの完成度の高さに唸らされたものの、特に誰がコスをしているのかは興味がなかった・・ということで収まったとしても、コミケ会場のアレ、ド派手に描きすぎちゃって、収拾つかなくなった感否めず。
ここに違和感を感じた読者も多そうですが、作者は連載前に、五条君の成長のために、司馬刻央を出すことは決めていたようですね。
この作品の山場である、12巻から13巻は疾走感がすごかったので、描きすぎちゃった・・って事なのかもしれませんが、正直、急な展開で無かったこととかにして欲しくはなかったです。
残念。
まぁ・・・、フォローするとすれば、人の興味は移ろいやすく、SNSでの大バズも一過性という社会的な風潮が表現され、平和に終わりました・・・。
シャンシャン。
ところで、最後に、司馬刻央と溝上氏の新人時代が描かれるスピンオフ作品が収録されているのですが、これが秀逸で、実は15巻で一番面白かったです。
私はこの作者さんの作品は『着せ恋』しか知らないのですが、本来は、こういう作品を描く人なのかな??と思ったりもしました。
着せ恋に比べ、青年漫画風でセリフも文字も多いけど、読みやすく、考えることも多かったです。
これだけ構成力があって文章も書ける人が、余分なものを削ぎ落とし、ボキャ貧まりんちゃんを作りあげたんだから、そりゃ、たまの一言にグッと来ちゃうのもさもありなん・・ですよ。
と言うところで、12〜13巻はストーリーの急展開を迎え、盛り上がった・・と思ったら、あっという間に元のラブコメに戻っちゃって完結した『その着せ替え人形は恋をする』ですが、まんまと作者の意図に嵌め込まれ、明るいまりんちゃんに救われた漫画でした。
コスプレに興味ある人には、読みやすい教科書としてもおすすめです。
それではまた。
次は、何を読もうかな??


