画像はコミック『あと一歩、そばにきて』/武田登竜門より
久々に、コミックをジャケ買いしました。
武田 登竜門(たけだ とうりゅうもん)さんの『あと一歩、そばに来て』。
ジャケ買いしたのなんて、数年ぶりです。
書店の一角にコーナーができていたので、話題の作品なのか、プロモーションがかかっているのか??
表紙の画が、美しいですよね。
まるで、シェークスピアの舞台に立つ、歌姫の様です。
ゴージャスな歌姫の恋の話なのかな??
と、ドキドキしながらページをめくりましたが、歌姫じゃなくて、ほんまもんのお姫様だった。
で、本編の絵柄は表紙ともちょっと違う感じだし、1個1個の作品に、物凄い性癖を感じるちょっと濃ゆい1冊でした。
これは結構、読み手を選ぶんじゃないかなぁ??
『あと一歩、そばにきて』は、短編集。同タイトルの作品は収録されていない
『あと一歩、そばにきて』は、武田 登竜門さんの短編集。
収録作品は全部で7話。
単行本はKADOKAWAから出版されています。
主にWEBで活躍されている方のようですが、あとがきを読むと、「個人で発表しました」というのが多いので、同人誌等で作品を発表していたのだろうかと思ったら、ご本人のnoteにもそう書いてあった。
で、タイトルとなっている『あと一歩、そばにきて』ですが、実は、収録されている作品の中に同じタイトルの漫画はないんです。
代表される作品のいくつかをまとめた、総合的なテーマが『あと一歩、そばにきて』という感じになっています。
内容としては、囚われた幼い王女と、その世話人との閉ざされた空間での感情の揺れを描いた「その時がきたら」を筆頭に、ごく短い、恋物語っぽいショートショートが1本、ウィットが効いたSFチックなブラックユーモア作品がいくつかと、作者の強い性癖を感じる作品が数作品。
そして、WEBでバズった「大好きな妻だった」がラストを飾ります。
同人誌発表という事はあるけれど、ここまで性癖を感じる作品は、個人的には珍しく、さぞかし作者は好きなものを描いているんだろうと思いきや、あとがきを読むと、各々の作品への苦悩などが綴られており、改めて、クリエイターというものは、神に自分の血肉を捧げて作品を作りだしているんだなぁと感心するなどしました。
『その時がきたら』他、『あと一歩、そばにきて』の簡単な感想
そんな訳で、先程も書いたように、作者の強い性癖を感じる作品集ですが、これを、ドラマチックと捉えるか、幼さや空想物語ゆえの結末と捉えるかは、読み手に大きく左右されそうです。
まぁ、私は後者だったので、この様な感想となっているわけですが、ラストの「大好きな妻だった」以外の恋愛要素のある物語は、全体的に「つりばし効果」や「ストックホルム症候群」、「代理ミュンヒハウゼン症候群」等という言葉を当てはめたくなる作品が多く、特殊な状況下で展開する心理や、相手に対する執着が描かれているのですが、なかなか独特の世界観が広がっています。
特に、巻頭の「その時がきたら」は、(王女が幼いという事もあるけれど)その傾向が強く、個人的には『お嬢さん、その感情は多分間違いだよ。』とツッコミを入れてしまう位。
閉塞と暗闇の中で、自分の世話をしてくれた男に恋愛感情を抱く王女ですが、個人的には、ラスト、目隠しが取れて相手の顔を見た途端、その感情が冷めていく・・、というオチを期待していたのですが、随分ドラマチックにラストを迎えたなぁと、王女の幼さにビックリ・・。
ほぼ傀儡である、自分の立場への反抗か??
ラスト、男が自分をアピールするように左手を王女に見せますが、男側にも、王女への情があり、自分の気持ちに気づいてほしかったんだと取るか、単純に、お世話したのは自分だと分かってもらい、罪人である自分に恩赦をかけてもらいたいという意向で左指を見せたと取るかは、あなた次第。
独特な世界観は、「その時がきたら」以外にも展開されていますが、「その時がきたら」は、舞台もゴシック調で、衣装やデザインにもそこはかとなくエロチシズムが漂う作品です。
エロチシズムといえば、このコミックには、全体的に淫靡な雰囲気やエロチックな雰囲気が漂う作品が多いのですが、その中に、星新一や筒井康隆ばりのSFチックショートストーリーが混ざり合い、胸やけ寸前の所でよいバランスとなっています。
読み手を選ぶ1冊ではありますが、その中でも私は、「初夜はつつがなく」と「楽園」という作品が好きですね。
それではまた。