個人的に一条ゆかりの最高傑作だと思う『プライド』

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言わずと知れた、少女漫画界の大御所。

この人知らずして少女漫画を語る勿れ的な作家さんは何人かいらっしゃいますが、一条ゆかり(敬称略)も、そのお一人。

代表作は、あの「ちびまる子ちゃん」のお姉さんも口にしていた『砂の城』や、ドラマにもなった『有閑倶楽部』など。

確固たる絵のうまさと重厚なストーリー構成で、人気少女漫画家のトップに君臨する一条ゆかりですが、リアル世代の私には、一時期結構長いスランプがあったと感じる所がありました。

そして、そのスランプ(らしきもの)から脱却し、過去最高傑作と言っても過言ではない名作を、雑誌「コーラス」から打ち出します。

それが、漫画『プライド』。

もう、今ではかなり前の作品となっていますが・・。

あの漫画は、すごかった。

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一条ゆかり作品のマンネリ構成に、スランプを感じる

一条ゆかりは、その昔『砂の城』という作品で、世の少女たちを、愛と絶望の坩堝へ誘っています。

同時代に、なかよしでは『キャンディキャンディ』が、りぼんでは『砂の城』と、各雑誌の看板作品となっていて、人気を二分していました。

というか、当時は漫画の貸し借りが普通だったので両方読んでいるティーンが多かったと思います。

というのは、砂の城のリアル世代から聞いた話で、私は実は、記憶ではキャンディしか知らないんですよね。

同時代の漫画だとは知らなかった・・。

当時はアメリカとかヨーロッパが舞台になっている漫画が流行ってたんですよね〜。

先進諸外国への憧れとでも言いましょうか??

この傾向はしばらく続き、私が高校を卒業する頃くらいまではスタンダードだったと記憶しています(??)

で、多分、海外を設定とする漫画の流行の終わり頃に打ち上げ花火の如く『ジョジョの奇妙な冒険』が発表されたような記憶・・・。

どちらかというと、「赤毛のアン」的要素の強い『キャンディキャンディ』に対し、死や絶望が常に付きまとう仄暗い要素の多い『砂の城』は、私より少しお姉さんの世代から圧倒的な支持を得ていたと思います。

なかよしやりぼんは、今は小学生向けの漫画雑誌ですが、当時はもう少しお姉さん向けの漫画雑誌でしたんですのよ奥様。

で、砂の城で不動のスター作家となった一条ゆかりは、その後「有閑倶楽部」の連載を不定期で続けながらも他作品を発表していきますが、この先生はどうしても「金持ち×若いツバメ」「年上の美女×それに憧れる若い男の子+その同級生の女の子(常にボーイッシュ)」「年増美女のボス×学校では地味にしている天才男子とその友人(見た目命のイケメン)」みたいな、似たような構図の物語から抜け出せず、同じようなストーリーの漫画ばかりを発表し続けます。

で、私はその頃(既に30年近く前の話になるけど・・)一条先生スランプなんだなと思ってました。

余談ですが、多分もうその頃には、一条ゆかりは経済的にも、漫画を描く必要もなかったんだろうな・・とは思いますけどね。

体調も良くなかったようですし。

私も全作品を網羅したわけでは無いのですが、なんのご縁か、一条作品には縁があり、結構漫画を読んできたので、ファンの方にもこの見解には賛同していただけるかなと思ってます。

金持ち以外の要素を払拭し、泥臭さと人間臭さと生きる力が注がれた『プライド』

そんな訳で、個人的に、

一条先生、もう描けないのかな・・・・。

と思っていた頃発表された漫画『プライド』。

この作品は、これまでの一条作品とは、全然違う構図だった。

年下のツバメもいなければ、年増美女に憧れる若いイケメンもいない。

まぁ、イケメンはいるんだけども、年上の美女に憧れているわけでもなく、年増美女に守られているわけでも、年増美女のお世話をしているわけでもない(あ、ちょっと後半お世話的なことはあるかも?)。

そして、幼馴染として、気になっていながらも素直になれず、何かといえば可愛くないちょっかいを出してくるツンデレの同級生もいない。

そこにいるのは、同時代の人間と、それを取り巻く大人達。

一条作品の悪い癖(と私は呼んでいる)で残っているのは、金持ち要素のみだ。

そしてそこに、それぞれの人生と、その足跡が描かれる。

舞台が音大であることや、声楽がテーマとなっているため、どうしても金持ち要素は外せなかったんだろうけど、この部分に関しては、明と暗の対比として昇華されています。

生粋のお嬢様として、恵まれた容姿に恵まれた才能。

でも、気位の高い事から、同世代からは妬まれて、親しい友人もなく、生き辛い性格の主人公「麻見 史緒」。

小さな頃から親とお金に苦労をし、様々な辛酸を舐めてきたゆえか、要領がよく立ち回りの上手い「緑川 萌」。

この二人が二人とも、主人公のように、話は進みます。

嫉妬心や対抗意識剥き出しで、それを隠すこともしない、持たざる者の萌。

一方、生まれながらにして、持っていながらも、大事な部分を学び損ねてきた、ガラスメンタルの史緒。

経済的な格差やその環境の違いから、出会うことの無かった2人が出会い、各々が成功を掴み取ろうとする様は、なかなかに壮絶。

何も知らないお嬢様の史緒は、泥を啜ってでも這いあがろうとする、ずる賢く策略家の萌にやられっぱなしですが、2人が本当のプライドを手に入れて、成長するまでのストーリー。

これまで、若干浮世離れした世界観の漫画を描き続けた作者が描く人間ドラマは、ある意味挑戦作だったのかもしれません。

「プライド」の記事を書くのに、この漫画を久しぶりに読み返したけど、やはりすごく面白い。

まぁ、ちょっとは浮世離れしてるんだけど、お金持ちの音大生となると、こう言うこともリアルなのかなとは思います。

それと、萌の悪意剥き出しなところが、最近の漫画にはあまり無くて面白いなと、読み返して思いましたね。

この漫画が完結したのが、もう、10年も前だなんて思えない。

好きな漫画を購入してると、家中漫画だらけになっちゃうので、私は泣く泣くそれらを処分したり入れ替えしたりするのですが、「プライド」は、その中でもずっとエースの棚に収まっている、私のバイブルのひとつです。

そして、あなたのバイブルにもなり得る漫画です。

知らない人は読んでみてくださいね。

*因みにバイブルはたくさんあります。

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