画像はコミック『二月の勝者』第17巻表紙より/高瀬志帆/小学館
『二月の勝者』17巻を、遅ればせながら読了しました。
・・熱かった・・・。
14巻から中学受験の前受が始まり、島津君のエピソードがひと段落したところで、ストーリーは大詰めを迎えていますが、15、16巻はちょっと落ち着いたストーリー組だったので、ドラマのようにサラッと流して明るい兆しが見えた所で収束させるのかと思いきや、そんなはずはなかった。
濃い!
濃すぎる!!
作者の高瀬志帆さんは、自身のTwitterでも、「全員の行方を補完する!」と断言していましたが、まさかここまでやるとは・・。
という感じです。
17巻は、もらい泣きしたりハラハラしたりと激熱で忙しい巻。
これから読む方は、心せよ!
・・って感じです。
『二月の勝者』17巻簡単な流れとあらすじ
『二月の勝者』いよいよ生徒たちが受験を迎えますが、14巻から1月受験が始まり、千葉や埼玉の受験までが17巻までに描かれています。
ドラマが描いていたのも、16巻の中盤辺りまでですね。
前受は肩慣らし程度との事で、メインキャラの強いエピソードを交えながら比較的平穏なストーリーが続くのですが、17巻は、いよいよ2月入試。
東京受験の本番を迎えます。
前半は、受験のシステムやそれを取り巻く環境などが描かれており、勉強になりながらも比較的落ち着いた流れで、小休止と言ったところ。
しかし、この小休止の回までもが興味深く、面白いのがこの漫画最大の特徴であり、リアルが描くすごい所。
利益を求めない公共サービスはとても尊いし、無くしてはいけない。
全員が受けられる教育の権利は絶対に必要なものだけど、利益を追求する側のハングリーさやお金にモノを言わせるような人力は、見ていて大変面白いものがあるよね。
そして、いよいよ2月1日。
受験の結果が明らかになっていきますが・・。
とまぁ、こんな感じの巻。
文字にすると薄いですが、とにかく中身が濃いです。
中学受験、全勝する子もいれば、ボチボチ不合格になる子も出てくる訳ですよ。
いよいよ、生徒のメンタルも崩れ始め、保護者の懐柔や説得の最終段階。
そこに入ってくる、新4年生の入塾手続き。
直前で折れた心をかかえ、逃げ腰になる保護者への対応。
折れた生徒の心のケア。
お花畑な部分が一切なく、自己啓発本のようなうさん臭さもなく、スピード感を持ってドキュメンタリー調に描かれる受験の様子は圧巻。
『二月の勝者』は登場人物がすごく多いのに、先生や生徒だけではなく、保護者までもが十人十色で描かれて、考え方や性格の違いも妙にリアル。
皆が皆ひとつの方向を向いていない所までが、読んだだけで手に取るように分かるリアルさで、「誰が誰だか分からない」なんてことがほぼない稀有な漫画なのですが、17巻のエピソードは、なんと、準主役からほとんどモブみたいな子達の受験内容がほとんど。
なのに、このスピード感や臨場感は一体何なんだ。
個人個人に建てられた綿密なスケジューリングと、分刻みで行われ、息もつかせぬ合格発表の嵐。
それらを全て網羅しつつのメンタルケア。
こんなに濃い内容なのに、一度でそれを読者に理解させる漫画力。
高瀬さんのツイートには、結構「他の漫画はこんなに凄いのに、自分は・・」みたいなものが多いのですが、全くそんな事はありませんよ。
漫画自体はフィクションですが、こんなリアルな天国と地獄を描けるのは、『二月の勝者』以外にないと言っても過言ではない位です。
☞事実は小説より奇なりという事で、実際の中受はもっとドロドロしてる所があったりしますが、これは塾側のストーリーなので、どちらかと言うと、力づけられる内容です。
次巻となる18巻は、いよいよメインキャラの第一志望の発表が始まる様子。
準主役の子たちのエピソードがあんな熱量で描かれたのだから、一体どうなる事やら。
楽しみ過ぎて今からドキドキしています。
『二月の勝者』については、以前も何度か「芸術的に面白い」と記事にしています。
中学受験に否定的な人には色々な感情が芽生えるかもしれませんが、とにかく、漫画として面白いので読んでみて下さい。
それではまた。