マンガ大賞受賞!『葬送のフリーレン』。地味に展開する【熱くない】面白さ

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『葬送のフリーレン』/アベツカサ・山田鐘人/小学館

「葬送」とは死者を送り出す事や、その儀式などのことを言います。

「葬送」とは、死者と最後の別れをし、火葬場、墓地に送り出すこと。

またそのための儀式。

Wikipediaより

人間よりも遥か悠久の時を生きる種族「エルフ」。

この物語は、数千年の寿命を持つエルフが、出会った人間と関わり、老いてゆく人間を見送る話・・。

なのかなぁと思ったけど、ちょっと違います。

遂に、2021年の漫画大賞を受賞した『葬送のフリーレン』。

その内容は、とても美しく儚く、哲学的で繊細。

だけどとっても笑える。

久しぶりにいい漫画を読んだなと、じんわりくる、まさに「大賞」にふさわしい作品です。

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小学館
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 『葬送のフリーレン』のあらすじ

『葬送のフリーレン』。

物語は、魔王を倒すために一緒に旅をしたパーティーが、晴れて魔王を討伐し、王都へ帰還する所から始まります。

冒険の終わりが、始まり。

魔王を討伐した時のパーティーは4人。

勇者とプリーストは人間。

戦闘要員としてドワーフ。

魔法使いとして、エルフの「フリーレン」が参加していますが、人間とエルフの時間は全く違う。

そんな時間や感覚のずれが織りなす物語は、その長寿ゆえか、感情の起伏の少ないフリーレンの性格の様に地味で静か。

序盤はおよそ少年漫画らしくは無く、キメゼリフも大きな活劇も、必殺技も変身もないけれど、心が動かされるこの漫画には、不思議な魅力があります。

こういう気持ち、忘れていた。

ストーリーとしては、メルヘンでファンタジーで、どちらかというとスタンダードなヒューマンストーリーの部類に入ると思うのだけど、説教臭くもなく、青臭くもなく、ましてや子供っぽくもない。

この手のストーリーで、無理なく読ませるのって、難しいと思うんですよね。

勇者たちのその後を描いた漫画ともいえるし、次の冒険活劇ともとれる『葬送のフリーレン』は、2020年10月末の時点で既刊は2巻。

作画を担当されているアベツカサさんの絵は、とにかくきれいで見やすくて、自然とキャラクターに愛情が湧いてくる。

愛情が湧いてくるのは原作のなせる業かもしれませんが、絵柄の美しさというのは、何人にも受け入れられる重要な要素なのです。

『葬送のフリーレン』は、少年サンデーで連載中の少年漫画

漫画大賞を受賞して、話題になった『葬送のフリーレン』。

どこで読めるのかというと、「週刊少年サンデー」で読むことができます。

週刊連載だったんですね、驚いた。

あのクオリティを毎週なのか・・、すごいです。

初めて読んだ時の感想が、なんて言うんですかね、「熱くない」んですよ。

でも、そこに静かなる面白さがある独特な雰囲気で、静かな世界だけどシリアスではなく、抒情的な雰囲気を醸し出しながらもウィットやユーモアのある会話に辛口なツッコミ。

メルヘンな部分もあり、笑えるところも多いのに、なぜか淡々と話が進む作風に、私は結構ビックリした事を覚えています。

最近、起承転結や喜怒哀楽の激しい漫画ばかり読んでいて、疲れた私の心にじんわり染み入るひとつぶの雫。

多分、コマ割りのせいだと思うんだけど、色々な部分でわざと見せ場を作ってないみたい。

ちょっと昔のRPGゲームや『ロードオブザリング』の世界観で、それを大事にするためか、背景や描き込みが非常に多く、絵本の世界のようです。

バトルシーンもあるんですが、序盤はどちらかというとドラマを中心に進んでいきます。

ファンタジーの王道を行く日常の中で話は進み、『少年漫画なのにこのテイストで大丈夫なのかな??』という心配もありました。

しかし

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2巻の終盤では雰囲気が変わり、急にバトル色が強くなります。

いきなりの熱い展開・・。

これからどうなる・・。

って感じでした。

3巻まで読んだ感想としては、バトルと日常のバランスがとてもいいので世界観をくずさず、メリハリがあるという印象です。

葬送のフリーレン1・2巻表紙写真
『葬送のフリーレン』/アベツカサ・山田鐘人/小学館

『葬送のフリーレン』2巻までのあらすじ

物語のオープニング。

めでたく魔王を倒した勇者ヒンメル一行は、凱旋の為に王都へ向かっていました。

一行は王都で祝福を受け、冒険は終わり、パーティは解散となります。

凱旋祝賀会の中、ヒンメルたちは思い出話に花を咲かせますが、今後は自分たちの路を行くことになります。

エルフのフリーレンは、趣味の魔法集めの旅に出る事にしました。

人間からは不老不死とも思えるエルフの寿命は長く、私達とは感覚も違うようで、フリーレンはとてもクール・・、というか感情に乏しく見えますが、10年一緒に旅をしてきた仲間のことは、憎からず思っているようです。

ただ、人間にとっては長い旅の10年も、エルフにとってはたった10年なんですね。

この辺のギャップに、読み手は一瞬はっとします。

エルフの寿命が長いのは、予備知識として皆さんあると思うのですが、実際にストーリーで読むとそのギャップを忘れているんですよね。

で、旅に出たフリーレンが、とあるタイミングで王都に戻るころ、50年が経過していました。

(ええ、そんな・・、たった数ページで50年進むとか何事ですか・・。)

50年が過ぎ、カッコいい勇者だったヒンメルは年を取り、まもなく寿命を迎えようとしています。

元の仲間たちは王都で再会を果たし、ヒンメルはフリーレンが滞在している間に息を引き取ります。

葬儀の場で、突然涙があふれるフリーレン。

この涙はフリーレン自身も予期せぬ出来事だったようですが、この時『人間の寿命は短いと分かっていたのに、何故自分は人間をもっと知ろうと思わなかったのか・・。』と後悔します。

こうして、フリーレンはもっと人間を知ろうと旅に出ます。

と、ここまでがあらすじのようですが、実はほんのさわりの第一話。

この物語、各地域で出会う人間とのショートストーリーも豊富で、それがメインかと思いきや、違う。

第2話は、さらに20年後。

・・、ちょいちょい!時間経過早すぎでしょ・・。

旅の途中で王都に立ち寄ったフリーレンは、魔王討伐時に同じパーティーだったプリースト「ハイター」の所へ立ち寄ります。

このハイター、ヒンメルより年上だと思うんだけど、長生きだね・・。

人間じゃないのか??

それは置いておいて、この時、死期が近いハイターから、「フェルン」という女の子を弟子として託されます。

フェルンは、ハイターが引き取って育てていた、戦災孤児だそうです。

ハイターの死後、フリーレンとフェルンは魔法集めの旅に出て、小さなエピソードが続きます。

フェルンはお行儀もよくて、常に敬語のよい子なんですが、フリーレンに対するつっこみは辛口。

フェルンと旅を共にするうちに、フリーレンは少しづつ今までと変わっていくんですが、所々でヒンメルたちとの旅を思い出し、物語の中では、まるでまだヒンメルたちが生きているような感覚にさえ襲われます。

この漫画、物語は旅の終わりからだし、ヒンメル達はすぐに死んじゃう。

みんな魅力的なのに活躍する所が見られないなんて!

と思いながら読んでましたが、彼らとの物語は、頻繁な回想シーンによって生き生きと描かれる形になっています。

さらに数年後、物語が動き出す

ヒンメルの死後、およそ30年ぶりにアイゼンの元を訪ねるフリーレン。

老いたアイゼンの寿命もあと僅かだから、会いに来たんですね。

何かして欲しいことはないかとフリーレンに尋ねられ、アイゼンは、死者と話すことができる場所が書かれた「フランメの手記」を探すようフリーレンに頼みます。

ややあって、フランメの手記を見つけたフリーレンとフェルン。

死者の魂と出会える場所が記されていたのは、大陸北部にある「エンデ」という都市。

その昔、魔王城のあった場所です。

実は、アイゼンとハイターは文通をしていたのですが、ヒンメルの葬儀の中、人間を知ろうとしなかった事を後悔して涙を流したフリーレンの事を思い、死者と話せる場所がある事をフリーレンに教えることにしたのです。

ヒンメルに伝えられなかったことを、フリーレンが直接伝えられるよう、計らったのですね。

かくしてフリーレンとフェルンの二人は、かつての魔王城があった場所「エンデ」に向かって旅を始める。

・・・、というのが、1巻です。

エンデに向かって出発したフリーレンとフェルン。新しい仲間と魔族

フェルンと旅を続けるフリーレン。

2巻では、「シュタルク」という男の子が仲間になります。

誰もが好感を持つような、カッコよくてキュートな男子です。

この漫画、死んじゃったヒンメルが一番カッコいいと思ってたけど、展開にぬかりありませんね

シュタルクはアイゼンの弟子らしいのですが、色々あってケンカ別れをしたのだそう。

でも、アイゼンはずっと気にしていて、前衛が必要なら、自分の弟子を探して連れていくようフリーレンに勧めました。

シュタルクが仲間になり、役者がそろったところで次の街を目指しますが、ここ迄でも結構小エピソードがいくつもあり、読者を飽きさせません。

シュタルクの戦闘シーンも、多くはないけどカッコいいです。

そして、2巻後半では魔族と対峙。

この物語で初めてのロングストーリーに入ります。

勇者の死後、力を取り戻した魔王直下の大魔族「断頭台のアウラ」。

フリーレンが訪れた街はずっとアウラと戦ってきたのですが、作戦を変えたアウラが、和睦の使者を遣わしていたところでした。

でも、これは本気の和睦なんかじゃなく、計略。

街側が和睦を受け入れれば、結界の力が弱まり、アウラの軍勢に有利になるためです。

完全な悪の「魔族」。

このあたりから、急に漫画は戦闘色が強くなります。

ほんわか漫画だと思ってたのに!

そして・・。

使者として街を訪問した魔族の「リュグナー」は、偶然見つけたフリーレンを見て、ある事を思い出します。

彼女が、歴史上で最も多くの魔族を葬り去った「葬送のフリーレン」である事を・・。

って・・。

タイトルコーール!!

熱い!!

熱すぎる!!

2巻の後半、役者が揃ったと思ったら急にこの熱い展開!

今までのストーリーはプロローグですか??!

まるで、タイトルが出るまでが長い映画のアレのようですよ。

結局「葬送」というのは、フリーレンと対峙した魔族は根こそぎ葬り去られるという意味のようで、フリーレンの通り名です。

これは紛れもなくファンタジー・アクション・アドベンチャー?

(と思ったけど、今週のサンデーを立ち読みしたら、童話のようなショートストーリーが展開してました。・・。面白かったけど、食えん奴だな、フリーレンは。)

『葬送のフリーレン』はまだ2巻が発売されたばかりで、海のものとも山のものともつかない感じですが、とても興味深い面白さがあります。

話が平坦な部分は結構正統派のファンタジーを踏襲していて地味なイメージですが、そこもひっくるめて面白いです。

更に、これから話が急展開してどんどん面白くなっていきそうな勢いがあります。

『葬送のフリーレン』第3巻は2020年12月発売予定です。

なんかもしかしてすごい人気が出ちゃうかもしれないので、ファンタジーが好きな人はチェックしてみて下さいね。

それではまた。

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