玲琳、感情露わに『ふつつかな悪女ではございますが』9巻あらすじと感想〜新展開にて面白くなってまいりました〜

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画像は、コミック版『ふつつかな悪女ではございますが』(一迅社)9巻表紙より引用

『ふつつかな悪女ではございますが』9巻読了。

あっという間に読んでしまいましたが、圧倒的ポジティブシンキング、コメディータッチで能天気に描かれていた玲琳ですが、ストーリーが進むにつれ、ダークな部分や人間臭い感情が表現されるようになり、読みやすさや絵の端麗さはそのままに、ご都合ライトノベル漫画から、陰謀渦巻く本格的な後宮ものコミックスへと変貌を遂げようとしています。

原作は、なろう小説だそう。

現在は一迅社より書籍化されています。

キャラクターの原案は、ゆき哉さん。

私が読んでいるコミック版は、尾羊英さんが画を描いています。

そんなところで、コミック版『ふつつかな悪女ではございますが』9巻のあらすじと、感想含めて。

新展開!「鑽仰礼」にて、雛女の序列争い

8巻までの豊穣祭編はひとまず幕を下ろし、何やら玲琳指導のもと、鍛錬させられている彗月。

豊穣祭編の後半、雛女達の茶会では、その力量を見せつけた朱家の雛女「彗月」ですが、9巻冒頭から、相変わらずのポンコツっぷりもポンコツっぷりも発揮しています。

どうやら、お次はお妃候補の雛女たちの序列を決める中間試験「鑽仰礼」が始まるらしく、無芸無才の彗月は修行をしているようです。

なかなか負けず嫌いの性格のようで、玲琳は、そんな所にも惹かれているようですね、微笑ましい。

将来皇帝となる、皇太子のお妃候補としての容姿や嗜み武術(はあるか分かりませんが)や芸術などを競う中間試験。

ご存知の方もいるかと思いますが、皇太子には今、5名のお妃候補がいます。

そのうち一人を、筆頭の皇后とし、それ以外の雛女達は、第二婦人、第三婦人となる・・、という感じです。

日本式で言えば「側室」かなとも思いましたが、一応第五婦人までは、正式な妃のようなので、アラビア式に第◯婦人と書いてみました。

で、皇后以下の序列第二位が「貴妃」

第三位が「淑妃(しゅくひ)」となり、順に「徳妃(とくひ)」「賢妃(けんぴ)」という並びとなります。

当たり前に序列で立ち位置や勢力図、与えられる金品のグレードや録なども違ってくるので、雛女達は、各家の看板を背負い、お家のため、将来の自分の立ち位置やプライドを賭けて競う事になります。

鑽仰礼で良い成績を納められなければ、雛女の座を剥奪され、別の雛女を立てられる事もあるらしく、まだ10代の雛女達の心中も穏やかではありません。

とは言え、現皇后である絹秀は、この手の成績は最下位争いをしていたらしいのに、現皇帝が皇太子時代に罹患した病を一人看病したことでごぼう抜きで皇后となったらしいので、お妃試験の成績は、「雛女」の立場に相応しいかどうか位の判定基準として扱われる、形式上のものかもしれませんね・・・。

そんな中、ひとり沈思黙考で鏡を見つめる玄家の雛女、「歌吹」の姿が、作中に差し込まれます。

鑽仰礼は、9巻で二つまで終了。拗れる関係と、いよいよ渦巻く陰謀

そんな感じで始まる鑽仰礼は、最初から波乱含み。

ここでの逆転を虎視眈々と狙っている他家は、皇后の第一候補である、玲琳を狙って陰湿な罠を仕掛けてきます。

ついに始まった、お家同士の跡目争い!

各々の陰謀渦巻く中、犠牲となる雛女や、陰謀匂わせ自分を晒すことに躊躇しない雛女。

陰謀渦巻く後宮で繰り広げられるお妃試験の行方は如何に・・・!!

という感じですが、9巻ではもう、鑽仰礼の課題のうち、既にふたつが終了となっています。

(9巻時点では、鑽仰礼の課題は三つとなっている。今後「特別試験」とかありそうだけれども・・)

鑽仰礼の課題をこなしてゆく場面はなかなか読み応えがありましたが、読み応えとしては、8巻のお茶会の方が面白かったかな??

鑽仰礼の課題をどうこなすかというよりも、ここは、誰に向けて、どういう罠が仕掛けられ、それが、玲琳と彗月の関係にどう影響していくのかが、焦点となっている気がします。

言語化しづらい彗月の感情と、人並みの年齢に相応しい感情が芽生える玲琳

玲琳はこれまで、逆境をも楽める天真爛漫さと才色を持ち合わせた、ポジティプシンキングキャラとして、良き人間としての部分ばかりが描かれてきましたが、実在する人間と仮定した場合、捉え所なく、主人公でありながらも物語をスムーズに進めるためのご都合キャラみたいな感じでしたが、8巻頃から随分と人間らしい部分が描かれるようになりました。

母親を早期に亡くした玲琳は、元々頭も良かったですが、か弱い体を抱え、健康を偽わらねばならず、感情が人より早く大人になっています。

と言うより、健康を害する負の感情は、既に死んでいたのかもしれません。

彗月を始めから嫌っていなかったのも、もしかしたら、ただ眼中になかっただけかもしれません。

その後、健康体の彗月と入れ替わったことにより、生きる楽しさを味わった玲琳は、生命力(=素直に感情を爆発させるエネルギー)溢れる彗月にあてられ、10代の娘並みにイライラや不安、怒りなどの感情に振り回されるようになります。

まぁ・・・、私も歳をとったので分かるのですが、いつもどこか具合が悪い状態から、健康体を手に入れた時の玲琳の衝撃たるや、言葉にできるものではなかったでしょうね。

一方、元々感情的な彗月は相変わらずですが、玲琳を認めながらも、モヤモヤとした感情をうまく扱えない様子。

好きだけど嫌い。

認めてるけど妬ましい。

分かっているけど苛立たしい。

この御し難い感情、誰にでも覚えはあるはず。

しかも、この感情の言語化って、とても難しい。

コミックや小説であるなら、その感情の言語化は必須ですが、その感情に答えはありません。

玲琳は玲琳で、庇護欲を刺激する彗月を「自分の箒星」と崇め、献身的に尽くしています。

でも、人間関係にはバランスがあって、施しすぎも相手の劣等感を刺激する事に彼女は気づいていない。

人に施すというのは、気分が良いもの。

また、その施しは、優位な立場だからこそできる=暗に、自分の優位性を相手に誇示している。という事も、玲琳は気づかない。

玲琳は、母のような、姉のような感情で彗月に尽くしているけど、それはたまに、尽くされる方を惨めにさせる。

玲琳の才色は持って生まれたものであり、多彩な技術は鍛錬の賜物ではあるけれど、そういう過程をすっ飛ばし、理性では分かっているけれど、どうにも治らないこの感情。

そんな、9巻で拗らせちゃった二人がどうなるのかは、10巻以降。

ぶっちゃけ、このコミックのカラーではないし、ストーリーのテンポも悪くなるので、解決自体は早そうですが、冒頭に書いた、玄家の過去や伏線が気になります。

これまで、派手な金家や猫被りの藍家については描かれましたが、質実剛健、朴訥で無頼な感じの玄家の雛女については、描かれることがほぼありませんでした。

でも、何やら過去がある様子。

また、金家の淑妃が、雛女時代を回想する一瞬もあり、10巻以降はこちらの方が見逃せません。

小説版もまだまだ連載中のようなので、今後の展開に期待せずにはいられません。

『ふつつかな悪女ではございますが』は、とても面白いので、もしまだ読んだことがなければ、ぜひ読んでみてくださいね。

それではまた。

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