『チェンソーマン』第9巻表紙/藤本タツキ/集英社
2020年11月4日発売された『チェンソーマン』第9巻。
コミック派の人にとっては待ち遠しかった瞬間で、本誌を追っている人にとっては断頭台に上る気持ち。
それぞれ色々な思いを抱きながらコミックを手に取ったのではないでしょうか??
私は後者です。
8巻のサンタクロース戦で大きな痛手を負ったデンジ達。
9巻では、後日譚から家族になり始めた早川家が描かれ、天使君の過去に触れながら、銃の悪魔との対決が始まります。
ストーリーもいいですが、「読む」という事よりも、映像に重きを置いた9巻は、迫力のシーンと情緒的な内容で読者に訴えかけてきます。
発売日に読んだけど、感想を書けるまでに1週間。
そんな巻です。
『チェンソーマン』第9巻あらすじ
『チェンソーマン』、第9巻のあらすじは、ネタバレを含みます。
もう、あらすじですからどこからネタバレなのかも分かりません。
取り敢えずお断りだけしておきます。
サンタクロース戦を終えた早川家の日常
9巻始め、早川家。
8巻ではサンタクロースとの戦いに決着がつきましたが、その後始末などがあるのかと思いきや、次の話は数日後です。
前回の戦いでは、サンタとのバトルよりも、地獄に連れていかれた事の方がデンジ達に大きな影響を及ぼしています。
地獄では一瞬にして闇の悪魔に全員腕をとられ、ビームと暴力の魔人は生きて帰ってこられませんでした。
ちょっといい人だった日下部さんなんて、石の悪魔と共に闇にやられて退場しちゃいましたよ・・。
ひどい・・。
マキマの協力によって一同は取られた腕ごと地上に戻されましたが、アキの腕は片方くっつきませんでした。
因みにデンジは無事。
天使君は両腕を失くしています。
コベニは退職届を出したそうで、9巻には登場しません。
パワーは五体満足ですが、ひどいPTSDとなり、デンジにべったりで情緒不安定の上赤ちゃん返りをしています。
闇の悪魔にみられているという強迫観念から、トイレに一人で行けないどころか、夜中に喚く「夜驚症」まで発症し、お風呂も一人で入ることができなくなりました。
まぁ、メソメソビクビクしているパワーは可愛いのですが、そのお世話をデンジとアキがしています。
お風呂に一人で入れない、一人で夜も眠れないパワーは、デンジと一緒にお風呂にはいったりしますが、デンジは『不思議と全然エッチな感じしねぇ・・』と呟きます。
もはや家族という事なのでしょうが、家族を持っていなかったデンジには、ちょっとその感覚が分からない。
でも、この辺は後々大事になってきます。
『不思議とエッチな感じしねぇ』とか言ってますけどね、絵柄はなかなかきわどいですからね、低学年は見ちゃダメ!
そんな状況の中、マキマは一人で予定していた旅行に行ったようです。
7巻で早川家も誘われていた江の島ですね。
覚えてます??
旅行計画の寸前で各国から刺客が来ちゃって行けなかったんですが、事態収束後、マキマはしっかり旅に出ていました。
実は、「二人で行っちゃおう。」とこっそりデンジは誘われていたのですが、パワーが心配なので断ったようです。
そんなある日、アキは故郷の北海道へお墓参りに行く事にしました。
アキの両親と幼い弟は、十数年前、銃の悪魔の襲撃を受けて亡くなっています。
非常にタイミングの悪い亡くし方をしているのですが、それはコミックの2巻を参照してください。
自分だけ生き残ったアキは、銃の悪魔に復讐するために公安に入ったのです。
北海道と聞いて、ついていきたいデンジとパワー。
最近落ち着いてきたパワーの様子を見ながら、アキは二人を連れて北海道に行く事にしました。
つかの間の家族旅行。
アキは今までの事を思い、岸辺に銃の悪魔討伐作戦から4課を外してほしいと申し出ます・・・。
マキマの呼び出しと銃の悪魔戦
実の家族でないにも関わらず、デンジやパワーに対するアキの気持ちは、実の家族の為の復讐心に勝ったのですが、後日デンジ達はマキマに呼び出されます。
銃の悪魔討伐から外れたと思っていたアキですが、デンジとパワーはマキマの管理下にあるため、アキの意思は尊重されません。
マキマは2人を外すことは全く考えていないようです。
デンジ達は、対魔7課に一時的に合流する形で参加する事になるのですが、アキには不参加を選ぶ権利があるという。
デンジとパワーはやる気ですが、結局アキも戦いに参加する事になります。
マキマの正体
対銃の悪魔戦の前、アキは入院している天使のお見舞いに来ました。
昨晩、未来の悪魔にされた予言が気になって、相談をしに来たのです。
予言の内容は、自分とパワーがデンジによって殺されるというもの。
そこで天使は「マキマに聞けば、何か回避できる方法を教えてもらえるかもしれない。」と提案し、2人はマキマに会いに行きます。
何故か海にいるマキマ。
ここでアキは、「どんな悪魔と、どんな契約でもするから自分に力を貸してほしい」とマキマに頼みます。
じっとアキの目を見つめるマキマ。
その口から出た言葉は
「それじゃあ、私と契約しようか。早川君のすべてをくれるなら、私が力をあげる。」
「これは命令です。契約するといいなさい。」
マキマの能力によって、「契約する。」と発するアキ。
マキマの正体は、「支配の悪魔」。
アメリカの大統領はそう呼んでいます。
その様子をみて、昔の記憶がよみがえった天使。
天使もまたマキマに支配され、村の住人の寿命を吸い取って武器にしてしまっていたのです。
マキマに刃を向ける天使でしたが、彼は再びマキマによって支配されてしまいます。
その時、銃の悪魔は現れました。
マキマが言うには、銃の悪魔は既に人間に拘束されていて、本体の20%をアメリカが、28%をソ連が、11%を中国が持っているとの事。
強大になり過ぎたマキマの力を憂いて、アメリカ大統領が全国民の寿命1年と引き換えに、マキマを倒す契約をしたのです。
絶望的な被害と共に銃の悪魔はマキマの元へやってきますが、マキマは天使の悪魔や未来の悪魔等の能力を使い、銃の悪魔の頭上に沢山の刃物を持った何か(悪魔なのか何なのかは不明)を召喚します。
黒い銃の悪魔に対して、刃物を持った白い人形(ひとがた)の集合体という対比が気味の悪い美しさを醸し出していましたね・・・。
銃の魔人との闘いそして・・・
場面変わって早川アキのアパート。
デンジとパワーはアキの帰りを待っています。
玄関から鳴るチャイムの音。
と同時に鳴り出す電話。
電話はマキマから。
銃の悪魔を倒し損ねて、悪魔はそこにあった死体を乗っ取って逃げたという・・・・。
玄関を見つめるデンジとパワー・・。
デンジはパワーに逃げるように指示して玄関のドアを開けます。
・・・、銃の魔人は、やはりアキでした。
デンジの心に大きな爪痕を残し、9巻フィナーレです。
大事な所は是非コミックを読んでください。
・・・、しんどい・・。
『チェンソーマン』第9巻感想・・、しんどい・・。
『チェンソーマン』第9巻、前半の嵐の前の静けさ的な日常から一転してファンを地に突き落とす衝撃のラスト。
「推しがしんどい」的な表現は好きじゃないのですが、9巻には「しんどい」という表現が最も合っています。
色々考察なんかもあると思うのですが、今日は9巻の素晴らしかった部分を書いて終わりにしようかなと思っています。
まず、銃の悪魔が現れた時の描写がすごい。
見開きを惜しみなく使い、銃の悪魔襲撃の様子が超映画的に描かれます。
個人的には子供を犠牲にすんなよという感じですが、すごいインパクトです。
更に、2週にわたり、延々と連なる犠牲者の名前・・。
この時は私、とびとびで読んでいたりしたから、突然の展開に
『チェンソーマン打ち切りが決まって暴挙に出たのか!!?』
とさえ思いました。
・・・、コミックで続けて読むと全然違いますね・・。
しかし、デジタルの人はこれってどうなってるんでしょうね??
横スクロールならいいけど、縦スクロールだと勿体ないよね・・。
ちょっと話がそれましたが、『チェンソーマン』9巻、最大の山場は銃の魔人との戦いです。
これは、しんどい・・・。
しんどいのは置いておいて、早川宅で突然鳴り出すチャイムと電話。
ここでちょっとすごいというか、怖い演出なんですが、デンジの家のチャイムを鳴らしているのは、誰もが彼だと想像できるんです。
だから、開けて欲しくない。
だけど、ストーリー上開けるのを分かっている。
誰だか分からない怖さではなく、分かっている事の怖さに加え、奇をてらわないオーソドックスな演出。
これで、ページをめくる前に読者に絶望感を与えているんです。
・・・、しんどい・・。
そして秀逸だったのが、バトルの引き方ですね。
しまっておいた寂しい気持ちや思い出とクロスしながら戦闘が行われますが、銃の魔人自ら戦いを引くところは目から鱗というか、ジャンプでこんな大人味のシナリオやるんだという、正直ちょっとびっくりしました。
目から鱗と書きましたが、実際は目から涙が出る所でした。
そしてそして、戦闘が白熱してる時に、デンジに協力してくれる人達がいるのですが、これも後々の伏線となっているので、9巻は見逃せませんよ!
おまけ??それにしても天使君の武器やセリフが気になっている
それにしても天使君・・。
彼は登場してから1回だけ過去の幻影がよぎるシーンがあるんですが、ここでちゃんと回収されていた!
ありがとー!
ずっと気になっていたんですよね。
マキマに操られていた事は忘れていても、自分が村人を全滅させた事とかは断片的に覚えていたんですね。
彼は寿命武器を使う事をいつも躊躇っていたし、死ぬ間際の人間の寿命でさえ吸い取る事をしなかった。
そして私が最も気になっている天使のセリフ
「大丈夫・・、君は天国へ行くんだから。」
これは、もうすぐに死ぬという女性が差しのべた手を取らず、死んでしまってから彼女にかけた言葉。
天使君が手を下したら、もしかして皆、地獄へ行くのか???
そういえば、地獄も悪魔もあるのに、誰も天国の事や神の事を語らない。
今日の記事は、思いのたけを書いてしまったので、長文となってしまいました。
最後の最後に、天使君の考察どころか疑問をあなたに投げかけて、私は逃げようと思います。
『チェンソーマン』は本誌も今すごくいい所です。
クライマックスも目前と言われていますが、もう目が離せません。
まだ読んでいないなら、読んでみましょう。
それではまた。