画像は、『メダリスト』第9巻カバー下より/つるまいかだ/講談社
今、私がものすごく面白いと思っている漫画「メダリスト」。
娘から勧められて1巻を読んだのですが、2巻以降、娘はウェブで読んでいるらしく、続きを読むためひとまず近所でレンタル。
これがもう、めちゃくちゃ面白い!
熱い!
号泣!
説得力のあるセリフなんかはもう、自分の糧として明日から使いたいくらい。
そんな感じなのに、コメディーベースで読みやすく、展開も早い。
初めから登場人物が結構多いのに、どのキャラクターにも個性があって、全く読み飽きたりせず、毎回ハラハラドキドキのままの11巻。
何回も借り続けて、結局かなりのお金を使ってしまった今・・
この漫画を手元に置きたい!
いつでも読み返したいっ!!
という気持ちで一杯になり、私は今、紙で揃えるか、ウェブで購入するか、悩んでいます。
取り敢えず、eBookJapanなどでは、3巻まで読めるみたいなので、是非試し読みだけでもして欲しい!
『メダリスト』は、こんな話
今日はメダリストの紹介記事なのですが、作者の「つるまいかだ」さん。
初めて聞くなぁ・・、他に何を描いてた人だろうと思ったら、なんとこの作品がデビュー作らしい。
pixivかなんかで人気の人だったのかというと、そうでもないみたいで(漫画はずっと描いていたと、本人のインタビューでは答えている)デビュー作品でこのストーリーや構成、クオリティや画力を見せつけられて、もう本当にビックリですよ。
デビュー作からいきなり人気作家になっちゃう作家さんも意外といますが、つるまいかださんは社会人の経験もおありだそうで、しっかりとした骨組みを感じさせるあたり、社会人経験の賜物なのかなと、勝手に想像。
この作品もまた名言続出ですが、コーチの対応や、子供達にかける言葉の選び方などが素晴らしく、別な意味でも本当に勉強になります。
表紙からも分かるように、『メダリスト』は、フィギュアスケートを題材にした漫画。
私は、実は好んではスポーツ物を読まないのですが、娘から「ママ、フィギュアスケート好きでしょ?!」と言われて読み始めた。
これまでもフィギュアスケート題材の漫画はいくつか読んだことがあり、どれもなかなか面白かったんですが、かつての、日本人不毛地帯だった時代に描かれたスケート漫画と、すでに何人ものメダリストを輩出した後の日本を舞台にしたスケート界を描く漫画は、その内容やスタンスは、全く違う。
そう言った意味では、『メダリスト』は、他のスケート漫画の追随を許さない。
一線を画している。
しかも、焦点が当たる選手達は、高校生などではなく、皆ノービス(9〜12歳)の子供達。
※この時点で、『子供が主役かぁ〜』と思った人、侮るなかれ!!
ジュニアにも年齢が満たない、子供なんですよ(10巻以降は、登場人物の成長に合わせてジュニア編が始まる)。
これまでのフィギュアスケート漫画って、オリンピック年齢の子達が主役で、お気持ち優先の構成が多かった記憶ですが、オリンピックを目指す選手になるには、当たり前だけど子供の頃からずっとずっと練習です。
たまに奇跡みたいなこともあるけれど、それぞれの年齢での結果を出して積み上げていかなければ、到底オリンピックになんて出られないし、成長も見込めない。
その段階を、あくまでも明るく、しかもリアルに描いているのが『メダリスト』です。
フィギュアのルールって、以前と比べ格段に難しく、細分化されてしまい、一般人ではだんだんついていけなくなっちゃってると思うんですが、作品内ではちゃんとルール説明もあり、分かりやすく解説されています。
漫画の中にルールの説明を入れるのって、つまらなくなる可能性も含んでいて、かなりリスキーな感じもしますが、そのルールの説明を逆手に取り、最も展開の熱い部分に被せて相乗効果を狙うあたり、計算され尽くしています。
また、最新の練習方法などにもしっかりと触れていて、本物のフィギュアファンにも文句を言わせない構成。
ハーネス練習のこととか、気になっていたんですよね。
って、もっと、ハリウッド映画並みの装置で行うのかと思っていたら、結構違っていた。
(羽生結弦選手のハーネス練習は、なんか、天井から吊ってるっぽかった)
今まで私が読んだスケート漫画を下げるような書き方はしたくないけど、『メダリスト』は、かなり違う。
かつて、イメージ優先で描かれていたその世界はもう、日本がメダリストを出した瞬間に、成立しなくなったのだと思う。
子供だから面白い!そしてまた、そこにはひとつのリアルが存在する
さて、『メダリスト』を簡単に紹介しましたが、その世界は、かなりコメディチックで明るいです。
選手達が子供という事もあり、皆素直で、子供らしい天真爛漫さを感じさせる明るさがあり、可愛いです。
一部苦悩や悩みも描かれますが、ストーリーのボリュームとしては少なく、トップを目指す世界にありがちな妬みや嫉妬のアレコレも極力少なく、読みやすさとスピード重視で削ぎ落とされている感じです。
少なくとも、10巻まででは『陰でヒソヒソ』的な部分は少なく、ヒエラルキーの頂点達は、マイペースで孤高な感じで描かれています。
まぁ、周囲に影響されるようでは、トップなんて到底狙えない。
みんな、自分中心でなければ、生き残れない世界なのだろう。
とは言っても、人間なのだから、周囲の目は気になるし、他人と比べての劣等感だってある。
んだろうけど、そこを敢えて削ぎ落とす事により、テンポ良く、いつ読んでも読後感がよく、元気づけられる作品に仕上がっています。
陰の気をほとんど感じさせない世界は、単純に明日への糧。
展開の速さゆえの若干のご都合主義もちょっぴりありますが、結局、トップへ行く人達と、行けない人たちの違いって、身もふたもない言い方をすれば「持てる者」と「持たざる者」の違いだと思うんですよ。
持てるものは上に行き、エリートしかいない中で、また生き残りをかけて争う。
主人公の「いのり」ちゃんの成長の速さに違和感を感じる人もいるかもしれないけれど、死に物狂いで練習したって、誰もがジャンプを飛べるようになる訳ではない。
だから、結局彼女も「持てる者」という訳ですが、「持てる者」と言うのは、その力量を発揮する世界に飛び込んだ場合、さらに精鋭しかいない世界で期待をかけられ、より一層の研鑽を強いられる。
自分で選んだ道であっても、練習練習また練習、戦う相手は自分であり、信じる相手も自分のみ。
そんな世界に、多くの選手はたった3歳くらいから身を置き、スケートだけがほぼ全ての世界で成長するんですよ。
小学生なんて、学校帰りにお友達と遊んだり、色々なことに興味を持つ世代なのに。
これを可哀想と思うのも自由なんだけど、結局、それができなければ、トップの中で競えない。
要するに、運動能力だけではなく、確固たる自我がその時点で出来上がっていなければ、結果など出せない。
たった12歳で、その自我を目覚めさせることができない一般人は、悲しいけれど、持たざる者。
メダリストの中の子供達は、欲望だけは皆すでに大人だ。
この作品では、ノービスの世界をあくまでもライトな感じに、読みやすく仕上げていますが、読み返すごとに、背負う世界を想像し、胸が「キュッ」となる部分もありますが、スケートが好きで続けている事や、コーチと信頼関係を築けている部分などに、とても救いがあります。
そして、もう一人の主人公、いのりのコーチである司先生。
彼の態度や言葉や考え方、いのりに対する姿勢、何もかもが素晴らしすぎます。
どのコーチも素晴らしく描かれていますが、私もこんな人になりたいよ。
と、色々書きましたが、漫画『メダリスト』。
とても面白いです。
素直に熱いです。
笑えます。
ほっこりできます。
手に汗握ります。
皆さんも是非!
それにしても、ノービスで4回転が普通の時代か〜・・。
この先、人間はどうなっちゃうのかね??
あ〜、やっぱ紙で買うかな〜・・。書斎が欲しい。
それではまた。