話題の漫画『二月の勝者』を読みました。
・・、ました・・、と言っても、連載はまだ続いていて、私が読んだのは9巻までです。
この記事を書いている2021年1月の時点では、10巻まで発売されてますね。
早く次を読まなくちゃ!
だって、すごく面白いから。
超面白い『二月の勝者』は、東洋経済オンラインで数話解放されていた
そもそも、『二月の勝者』は「東洋経済オンライン」で数話解放されていたので読んでみたのがきっかけですが、ものすごく面白いです。
無料分読み終わってすぐにレンタルしてしまったくらいです。
題材が中学受験なので、それと聞いただけで拒否反応を起こしたり、さぞかし熱心な親が登場するのではと想像する方も多そうですが、登場する家庭は三者三様ですが、特別と言う訳ではなく極一般的。
今や富裕層だけではなく、地域によってはクラスの半分が中学受験をするという都内のお受験事情をリアルに物語っている作品です。
舞台は学校ではなく進学塾。
お試しで受けた体験授業を皮切りに、受験の波に飲み込まれ、引くに引けなくなった親・・。
正にそうなんですよ。
私の友人もそうだったし、親戚もそうだった。
しかし、中学受験は親のものと思われがちですが、意外とそうでもなく、地域性もありますが、自ら選んで受験する子も多いです。
塾側、保護者側、生徒側、どの目線で見ても、とにかく芸術的にリアルで面白い『二月の勝者』は、ドラマ化も決定しています。
生憎コロナのために放送は延期となっていますが、学校教育では成し得ない、営利目的だからこそできる、膨大なデータを基にした進学指導のノウハウや、周到に用意された先手や次の一手は舌を巻くほど。
特に、6巻でみせるカウンセリングの基本、「傾聴」「オウム返し」「置き換え」の手法はお見事の一言につきます。
これ、わざわざ読者にそれを使っていると分かる様な仕組みで表現されているので、この話術を知っている読み手は思わずニヤリとしてしまう事でしょう。
さらに、保護者別に使い分けられたプレゼンテーションは素晴らしく、中学受験に興味がない方も引き込んでしまう魔力があり、存分に楽しめる作品になっています。
『二月の勝者』あらすじ
それではここで、簡単に『二月の勝者』のあらすじです。
吉祥寺にある「桜花ゼミナール」は、中堅校の中学受験がメインの進学塾。
トップ校を狙う子供も通っています。
そこにやってきた、業界トップのスーパー進学塾「フェニックス(サピックスの事か??)」の元講師である黒木。
彼は、塾生の進学実績が振るわず左遷されてしまった塾長の後釜としてやってきました。
フェニックスでは、トップのクラスを担当していた超人気講師なのに、ちょっと緩めの桜花に何故やって来たのかというのは後々明らかにされますが、黒木は桜花に新たな風を吹き込み、塾生や講師たちの意識改革に乗り出します。
一方、塾の運営を学級運営と勘違いしているような新人講師の「佐倉麻衣」。
彼女は、まだまだ未熟で周囲の事が見えておらず、あくまでも利益を追求する黒木に反感を持ちますが、彼の冷徹な物言いややり方は、結果として生徒や保護者が満足する結果となる事を認め、「教育者もどき」からプロの塾講師へと、少しづつ成長を遂げていきます。
いやしかし、この佐倉ちゃんて子、塾と学校を混同しちゃってて、序盤は本当に『青臭いな、だったら教員になりなよ。』と、大人からは反感を買いそうです。
この、未熟極まりない新人講師の目を通して、リアルな中学受験と塾としてのニーズが表現されていて、『二月の勝者』はとても面白いです。
コミック序盤で「それでも教育者ですか!」と詰め寄る佐倉に、「私たちがいつ教育者だと言いましたか?私たちはサービス業です。」(意訳)と言い放つ黒木はスカッとジャパンですね。
そう、塾には塾の役割があるのです。
黒木の名言は他にもたくさんありますが、ストーリーを通して一貫したテーマとなっている「12歳の受験と18歳の受験(大学受験の事ね)は違う。」という部分。
この部分を説明するように挿入される子供たちのエピソードも、塾や子供ならではのものがあり、さらにそれを解決していく黒木の手腕が素晴らしく、読者はグイグイ惹きつけられるどころか、これまたカタルシスというかスカッとジャパンです。
生徒たちや保護者、桜花やフェニックスの塾講師たちと、登場人物はかなり多いのに、子供達の個性や背景も見事に描き切っていている『二月の勝者』は、まさにお見事な作品。
絵柄に関しては、ちょっとクセがあるかなという印象を受けましたが、それもあまり気にはならないくらい、ストーリーはリアルに作り込まれています。
『二月の勝者』は、中学受験に興味がない、または否定的な人でもビジネス漫画として面白く読めると思うし、塾のシステムに感銘を受ける人もいると思いますよ。
「中学受験は親のエゴ」という考えしかない人も、教育や環境の大事さとか、世の中の見方が変わるかもしれないので、機会があったら読んでみて下さい。
それではまた。