『波よ聞いてくれ』ドラマ化!1巻2巻だけ読んで、この漫画を分かった気になってはいけない!

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画像は『波よ聞いてくれ』(作者/沙村広明 講談社)1巻あとがきより転載

2021年に、こんなツイートをしてから1年半・・。

元来の遅筆が災いし、結局『波よ聞いてくれ』の記事を書かないまま来てしまいましたが、2023年4月21日スタートの金曜ドラマで、この漫画のドラマがスタートするというではありませんか。

日常の妙なリアルとあり得ない位奇抜な事件が交互にやってくる異空間。

しかし、その奇抜な事件も、『あり得ない』だけでは片づけられない、絶妙なさじ加減の現実味。

綿密に張られた伏線が、わりと忘れた頃に回収される構成力。

序盤は地味に日常が主なドラマとなってますが、2巻後半から3巻で一気にストーリーを展開させてくるので要注意。

役者(各キャラクターの意味で使用)のセリフはどれも秀逸。

聞き逃したら、ついていけないハイスピード。

これは、漫画だけど漫画ではない。

感想を書く人間に、キャラではなく、役者と書かせてしまう程、完成度の高い、紙で見るドラマだ!

(それを「漫画」と呼ぶんですよ・・。)

『波よ聞いてくれ』の簡単あらすじと紹介

そんな訳で、『波よ聞いてくれ』の簡単なあらすじ。

意外と普通に始まる第一話。

25歳を過ぎてクズな彼氏に50万を持ち逃げされた主人公「鼓田 ミナレ(こだ みなれ)」は、酒場でクダを巻き、初見のナイスミドル(と作中で語られるが、絵柄的には、普通のスケベ親父)に絡みまくってほぼ泥酔状態という、かな~り痛い状況。

で、泥酔のまま自宅へ帰り、ほとんど記憶がない状態だけれど、自分を立て直し、それでも起きて仕事場へ向かう。

しかしこの、たった2ページで読ませる自分の立て直し方で、主人公の趣味や性格が一気に読み取れる綿密さが凄い。

さて、ミナレの職場は、札幌にあるスープカレーの店「ボイジャー」。

なんか、普通のOLとかじゃなく、スープカレーのお店でフルタイムとか、その辺がもう設定なんだけど、実際にお仕事している人が多い業界だし、妙な説得力があります。

で、ランチの時間にいつも流しているラジオ番組から、何故か自分がクダを巻いている音声が流れてきて・・・。

と言う掴みで始まる『波よ聞いてくれ』。

結局、ひょんなことからミナレは、色々あってクビになりかけているカレー屋の仕事をしながらも、深夜番組のパーソナリティーを務める事になり、ラジオのネタ探しも兼ね、色々な事件に自ら巻き込まれる・・。

と言う感じのストーリーで、忌野清志郎の「トランジスタラジオ」や徳永英明の「壊れかけのradio」、はたまた佐野元春の「悲しきradio」かエコーズの「ONE WAY Radio」よろしくラジオ愛が語られる部分もあれば、日常の、ほんのちょっぴり生臭い超現実的ストーリーのターンがあったりで、1巻~2巻中盤までは、ラジオ番組の仕組みや人間関係、各役柄の性格などを理解させる事に費やされ、役者同士の掛け合いなんかを楽しみつつの日常パートとなっていますが、実はもう、既にここには伏線がいくつも張られていたりします。

個人的に、序盤びっくりしたのが、ミナレの元カレ「光雄(みつお)」のクズさ加減の描かれ方と、ミナレの流され具合。

ミナレが元カレの光雄と会う話があるのですが、この辺のエピソードや描かれ具合が、怖い位に見てきたよう。

50万も持ち逃げされたのに、つい情にほだされるミナレを、一体だれが叱る事が出来ようか・・。

え、この漫画、描いているのは男性だよね??

そこには、男性が描く、ありがちな恋愛漫画のファンタジー設定は一切ない。

こわい、なんか二人の様子がリアルすぎてマジで怖い・・。

(話は別に怖くない)

それなのに、3巻で語られる、とある事件の、男女の出会いから顛末までのあり得なさ。

作者は一体どんなバランス感覚でこの漫画描いているんだ・・。

『波よ聞いてくれ』のキレキレセリフ2連続

さて、『波よ聞いてくれ』の漫画自体は文字数が多い。

よって文字が多いタイプの漫画が嫌いな人は敬遠しそうだし、読み飛ばしもありそうだけど、この漫画は、役者のセリフや効果音、BGMの至るまでを見逃してはいけない。

日常パートと序盤を読んで、『こういうタイプの漫画か・・。』等と、分かった気になってはいけない。

2巻後半から物語は展開を始めて、3巻で急に流れがかわる・・というか、あり得ん展開だけどあり得るもしれない事件が続々と続き、あまりに激しい波が襲ってくるので、読者は途中で方向転換が入ったのかと推察するが、これ、脚本が変わったのではなく、多分もう、1巻の序盤に伏線が貼ってあったんですよ・・。

1巻の伏線3巻で回収とかね、打ち切られてたら回収できなかったじゃんね。

しかも、その伏線、語られなくても終了するような、適当にお茶を濁せる位の伏線レベルじゃありませんから。

9巻まで読んでも正体不明の『波よ聞いてくれ』を読むべし

という訳で、『波よ聞いてくれ』。

3巻くらい迄の部分を話題にしましたが、2023年4月の時点で既刊は9。

4月21日に、第10巻が発売されます。

この作品、複雑に並行する物語が絡んできたり、結構な伏線が序盤からあったりと、作者も1巻のあとがきで書いていますが、未だに正体不明で気が抜けませんが、基本平和なお話(?)で、今の所、お通夜状態なメンタルになる事もなく純粋にハラハラドキドキワクワクと笑いでストーリーとセリフを楽しめています。

作者の沙村広明さんは、『無限の住人』の作者ですが、本作を連載する時に、「絶対人が死なない物語を描く(意訳)」と決めたそうな・・(1巻あとがきでコンセプトを語っていて、これは多分守られると書いている)。

しかも、札幌が舞台なのに、作者の出身は北海道じゃないらしいし、舞台となってるスープカレー屋のモデルも札幌じゃなくて東京らしいとういう、こっちの設定も何故か正体不明。

基本平和なお話と言うのは確かにですが、ほっこりした日常・・とは訳が違うのでご注意。

ひょんな事からラジオのパーソナリティーを務める事になった主人公の鼓田 ミナレ(こだ みなれ)を筆頭に、どいつもこいつもセリフがキレッキレ。

取り敢えず、キレキレのセリフの一例。

よく考えれば非現実的な事件ばっかり起こるのに、何故か妙なリアル感を漂わせるのは、『あり得ないけど、絶対ないとは言えない位はあり得るかも・・』という緻密に計算された脚本のなせる技か、逆に突き抜けちゃっているからか、ちょっぴり劇画調で、線が多めの絵柄のせいであるのか・・。

セリフがどれも秀逸でキレッキレなため、『現実にこの人たちの中に入ったら、会話のテンポについていけずに取り残される気がする・・。』

なんて考えちゃう位、自分の頭の回転の遅さに、妙な劣等感まで刺激する、カフェインバリバリのエナジードリンクのような作品『波よ聞いてくれ』。

リアルな日常+奇抜な事件+アクの強い登場人物。

こんな設定やストーリー、深夜枠の金曜ドラマに、超お似合いなんでは・・?

私は実写版てほぼ見ないのですが、これはちょっと見ちゃうかも??

いや、どちらかというと期待している。

それではまた。

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