画像は「ゴールデンカムイ」第31巻表紙より/野田サトル/集英社
遂に、というか、とうとう、漫画『ゴールデンカムイ』が、31巻を以て終了しました。
本誌の方はちょっと前に終了していますが、コミックは全31巻で、最終回を迎えています。
ずっと追い続けていた私は、寂しいけれど、もう、感無量と言った感じで、何か書きたいけれど、頭の整理や感情が追い付かず今まで来ていて、でも、やっぱり溢れる思いを文章にしておきたくて、やっと今、感想やあれこれを記事にしている感じです。
圧倒的な熱量と画力により仕上げられた作品は、加筆により誰をも納得させる終わり方へ変貌を遂げています。
ああ~・・、でも・・、皆、逝ってしまった・・。
「ゴールデンカムイ」、コミックの加筆修正について
「ゴールデンカムイ」は、コミックでの加筆が多いとは聞いていたのですが、本誌を読まない私は、それまであまりピンときてませんでした。
今回は、最終回の3回手前から本誌を買っていたのですが、加筆修正、その内容に驚愕しました。
加筆と言うと、説明的な補助部分で数ページ単位の挿入があったり、作画を修正したり、背景を描きこんだり、バトルシーンを数ページボリュームアップするようなイメージでしたが、野田サトル氏は、コマ割りや構成までも変更している。
氏がデジタルで描いているのか、アナログで描いているのか分かりませんが、どちにせよ、丸々差し替えるとか、ページを増やすなどの加筆ではなく、コマ割りを変えるとかまでするのは、かなり難儀な作業のはずです。
途中で修正するのって、多分プロでも超絶面倒だと思うので
まさか、連載時から、コミック用の原稿と、本誌用の原稿の2種類を分けて作成していたのか??
と思ってしまう位。
まぁ、今はとても良いソフトがありますけどね、それでもやっぱりコマ割まで変えるのって大変だと思うんですよ。
物語のラストは本誌と同じなのですが、誰もが気になっていた、あの方についてのエピローグまで追加されていて、作者の情熱と愛情を感じられる、納得の1冊となっています。
野田サトルの漫画って、結構変態チックな人が出てきますが、こんなに手の込んだ加筆をするなんて、作者自身も、かなりの変態(誉め言葉)なのかもしれません。
「ゴールデンカムイ」31巻の感想と、退場シーンについて
しかし・・、30巻31巻は、圧倒的なスピード感がありながらも、全編死闘と言う感じで、なかなかしんどい展開が続いていましたが、最後に熊をちょこっと出すあたり、この人、忘れてないな・・と思いました。
夫曰く
「ゴールデンカムイ」は、展開に困るとすぐ熊を出す。
というイメージらしいですが、31巻は、別に展開に困ったわけではなく、誰もが想像しえない天災や、舞台である北海道、呪われたカムイの象徴として熊を登場させたのではないかと、私は思っています。
熊が登場しちゃうとさ~、誰が悪とか、綿密な計画とか、苦しい展開とかあれとかこれとかそれ、諸々が簡単に崩れ去り、神出鬼没な故、その後の展開がどんなにご都合主義でも、収まっちゃうんですよね。
なので、野田サトル氏、或いは編集さんにとって熊は、ストーリーを建てていくうえで、困った時に降りてくる、ある意味、カムイだったかもしれないですけどね。
という事は、やっぱ困った時の熊頼みだったのか??
ていうか、野田サトルの担当さんの名前が「大熊」さんらしい・・w
さて、登場人物が結構簡単に退場しちゃうこの作品も、30~31巻はそれぞれの花道が用意されていました。
が、しかしそれは、花道と呼ぶにはあまりにも壮絶。
個人的に一番壮絶だったのは尾形の花道でしたが、それはまた別の機会で・・。
今日は、牛山様の花道についてです。
牛山様の完璧な花道と伏線回収!思わず泣いた
牛山様の花道には、思わず泣いてしまいました。
実は、「ゴールデンカムイ」の序盤に、家永が牛山に向けて言った「あなたの完璧はいつだった??」という問いは、ずっと私の心に小さい魚の骨のように残っていて、如何に最強の牛山様でも、老いには勝てず、人生のピークが既に過ぎている事を、人知れず儚んでいた場面もあったんじゃないかと思う時があったのです。
でも、最後に、なんと、家永の伏線が回収されます。
伏線回収のシーンを読んで、私は「ああ~。」と声が出てしまったのですが、あんなに古いセリフを持ってきて、牛山辰馬としての完璧な最期を飾らせるなんて、なんてファンサービスなんだ。
すごすぎるよ、野田サトル・・。
牛山様は最後まで最強だったし・・、最後まで不敗だった・・。
熊ですら、その眼力に尻尾を巻いて逃げ出す牛山様。
ラストの大暴れは、月島をもって「歯が立たん」と。
「この俺を神話に加えなよ。」
「どうだ、強いだろう?」
との漢らしい名言を残し、最後まで不敗であった牛山様。
あなたは、名実ともに、神話であり、漢の中の漢でありました。
でも、本当は退場して欲しくなかったし、最後の女(それがどんなかは分からんが)と幸せに暮らして欲しかったし、ちびっ子相手の柔道教室とか開いて、永倉さんとこと張り合って欲しかったですよ・・。
鶴見中尉って、結局いくつだったんだ??
さて、加筆修正で、ページ数やエピソードが大幅ボリュームアップとなったゴールデンカムイ。
最終回の後、後日談というような形で、全く違う話が、数ページ挿入されています。
太平洋戦争の時、ソ連に北海道侵攻を断念させたマッカーサーの話ですが、これは、マッカーサーの独断ではなく、実は、裏で糸を引いていた人物がいたのではないかという、話です。
その人物の名は、コミックでは明らかにされてはいませんが、読めば誰でもわかる人物を示唆しています。
で、あれ??
日露戦争が始まったのは1904年で、終結したのは、1905年。
漫画「ゴールデンカムイ」は、日露戦争帰りの杉元佐一が、友との約束を果たすため、金塊争奪戦に加わるお話でした。
で、太平洋戦争が終結したのは、1945年です。
その間40年。
鶴見中尉って、皆のお父さん的なイメージで見ていたけど、実際、いくつだったんだろう??
そう言えば、中尉って、何となく上の階級なイメージですが、士官学校を卒業して少尉だし、陸軍大学校に入学したら、在学中に中尉に昇格します。
上の階級には、大尉があるし、そのもっと上が少佐や中佐。
エリートなら、少将や大将、元帥とかまでありえます。
で、関係ないけど、私の好きな「エロイカより愛をこめて」の、クラウスは少佐だった。
ちょっと調べた所によると、普通は29歳で大尉らしいし、中尉の定年は、47歳だとか・・。
鶴見中尉は、途中でエリートコースから外れていますが、それでも、40歳よりは若いという事になります。
奥さんと子供もいた描写もあったし、風貌に貫禄があり過ぎたからすごく年上に見えていたけど、下手したら20代後半という事もあり得ます・・。
という事は、太平洋戦争終結時は、まだ70代の可能性もありますし、徳川家康だって70過ぎ迄生きたのだから、全然ご健在でもおかしくはないですよね。
鯉登少尉や宇佐美は年相応な感じだったけど、月島軍曹も鶴見中尉も絵柄があれだから、今の感覚で読んでしまっていた。
軍曹に関しては、間違いなく鯉登少尉よりは年上なので、まぁ、年相応と言えなくもないか。
それにしても、彼は最後に、裏表のない人物に救ってもらえ、納得のいく忠誠を誓えて本当に良かったよ。
話は戻って、学歴というか、明治時代の教育の話。
明治時代の田舎なら、小学校(尋常小学校)卒も普通ですから、ゴールデンカムイの登場人物は、私が思っていたよりも、相当若いという事になります。
杉元佐一も、17歳で志願兵となったなら、まだ19歳~20歳の可能性もあります。
現代とは、大人になる感覚や概念が違うけど、そんな若者たちを死地へ向かわせるなんて、戦争は本当に狂っている。
物語は大団円だったけど、実は、アイヌの歴史はこの後辛いことになるし、昭和の頃には太平洋戦争に突入してしまう事を考えると、戦争はなんて罪深い事なんだろうと思うし、この後もまだアシリパと杉元は大変な思いをするのだと思うと、胸が苦しくなりますね。
・・、またしても話が逸れてしまいました。
で、最終的に杉元は、アシリパさんと共に歩む道を選びますが、年の差カップルという事でもないという訳ですね。
そう言えば、最終回では、梅ちゃんが新たな伴侶の子を妊娠しているというコマがありました。
私はこの加筆を、梅ちゃんの再婚が、読者には伝わり辛いかもとの意で、作者が加筆したのだと思っていましたが、梅ちゃんがまだ若く、妊娠可能であること=杉元もまだ全然若者であるという事を読者にイメージさせるためのものだったのかな、とも思いました。
長々と書いてしまいましたが、8年前から追っていた「ゴールデンカムイ」。
怒涛の最終回までの展開と、大団円。
類稀なる熱量が、最期まで伝わってくる素晴らしい漫画でした。
もしも、まだ読んでいない方がいたら、是非読んでみて下さい。
絶対に面白いです。
それから、軍隊の昇格等についてはあまり深掘りしてないので、間違っていたら、Twitterかなんかで、そっと教えて下さい。
それではまた。
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